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「絵画」と出会い「私」と出会う - 画家 坂本一樹(S60卒・普)

活躍する卒業生 画家 坂本一樹 私は「画家」として生活している。滝の卒業生で美術を目指す人はほとんどいないので画家といっても中々イメージ出来ないかもしれないが、簡単に言うと絵を描いて展覧会を開き、作品を気に入ってくれた人に売って生活するということである。
 高校2 年生の頃、せっかく生れてきたのだから何か残るもの、自分だけのオリジナルなものを創って人々を感動させたい、人生を意味あるものにしたい、と考えた。普通じゃいやだ、と思っていた。今はすべての職業はどれもクリエイティブだと分かるのだがその当時の私には分からなかった。では何をしてゆけばいいのだろうと進路を探していた時、友人を介して美術大学という存在を知った。美術が特に好きだった私に、それは何か特別なヒラメキを感じさせた。絵とは何か、画家というものは何なのかをほとんど知らないまま、ただ好きな事を学びながら生きてゆく道がある、という期待感だけで進路を決めた。
 美術大学時代は作品を制作することは勿論だが古今東西の優れた絵画を観るということと、多くの作家を知るということが重要な勉強となった。それは目を鍛えることであり、美的センスを磨くことでもある。自分の中にひとつの基準が出来ることで、良い仕事とそうでない仕事を区別出来るようになるのだ。
 世界には数えきれないほどの画家、美術家がいて、その内容や表現方法は多様である。又、傑作といわれるような優れた作品は、時代は古くても内容は常に新鮮さを感じさせるのがおもしろい。「絵画」は旧石器時代の洞窟壁画から現代絵画にいたるまで, "真っさらな画面に何かの願いや狙いをもって手で描く" という素朴な方法で制作されることは変わらない。その変わらぬ表現方法の中で今の時代を生きている私は何を真っさらな画面に描いてゆくべきか…。
 私の作品は、初期のころはアフリカの動物を中心としたモチーフのある具象的表現で制作していた。その不思議な存在感、質感に大きな魅力を感じていたからだ。長期にわたり制作し続けたが、ある時ふと立ち止まり、10 年ほど前からは線や色彩を構成した抽象的表現の作品に変化して現在に至っている。
 アトリエを構えている千葉県南房総市は房総半島の最南端、海と里山の広がる自然の豊かな所である。東京から程近いのに狸やフクロウ、野ウサギ等野生動物もいて、夜は満点の星空が広がる。作品には無意識のうちにこの生活環境からくる色彩、形、イメージが入ってきているのではないかと思っている。
 幼少の頃から自然の中で昆虫や魚、小動物や植物と戯れて遊んでいた。星空を眺めて遙かなる宇宙に想いを馳せ、飛行機やブーメランを作って飛ばし、その飛行の原理の不思議を楽しんでいた。たくさんの不思議、存在、宇宙…。今もその根本的な探求"存在の神秘を探りたい" という気持ちは変わっていない。
『誰にも似ていない唯一無二の絵を描きたい。』
 素の自分、無垢の自分が発する声に静かに耳を傾ける。そして自分に問い、画面に向かうという日々を続けている。
★日本画家 坂本一樹 ウェブサイト