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過去と未来をつなぐ NHKチーフ・ディレクター 岩田真治(S61卒・普)

活躍する卒業生 NHKチーフ・ディレクター 岩田真治 ラジオ放送が始まって今年で90年。そして、来年創立90年を迎える滝学園。卒業生の私にとって、卒寿づくしの今日この頃。何ともおめでたい。NHK と滝学園、ともに同じ大正時代に産声を上げたのは、けっして偶然ではなく、文化や教育の大衆化と密接に関わる必然だが、このテーマをさらに深めるのは宿題にさせていただくとして、本稿では、最近私が制作した番組の話を綴る。
 昨今のデジタル技術は、白黒で撮影された映像に色彩を復元させることを可能にした。昨秋放送したNHK スペシャル「カラーでよみがえる東京 不死鳥都市の100年」は、その技術をフル活用した本邦初のチャレンジだった。明治維新、関東大震災、東京大空襲と幾多の試練を乗り越えて世界屈指の巨大都市となった東京。そして、2020年、2度目のオリンピック開催を控えるTOKYO。その波乱に満ちた現代史を描く企画をやらないかとプロデューサーから打診された当初、生粋の尾張人である私がおこがましいなあと思いつつも、振り返れば滝学園時代、東京への憧れが人一倍強く、勉学に励む最大のモチベーションとなったのが「東京」だったのも確かなので、これもご縁と思い、是非にと快諾した。
 白黒映像をカラー化する試みは、フランスで始まり、欧米では今や歴史番組の演出として定着しつつある。今回のNHKスペシャルも、経験豊富なパリのスタッフとの共同作業で進められた。欧米でも日本でも、白黒の記録映像をカラー化する背景には切実な問題が横たわっている。若い世代の歴史への無関心、想像力の欠如に対する強い危機感だ。映像がカラーになると、自分とは無縁の遠い過去と思っていた出来事に親近感が生まれ、歴史と現在との連続性が感じられる効果が生まれるのではないか、そんな期待があるのだ。膨大なリサーチ、日本とフランスの流儀の違い。2年に及ぶプロジェクトは試行錯誤の連続だったが、幸いなことに、放送後の反響は大きく、若い世代からの反応も良かった。
 こうして放送の歴史に新たな1頁を加えることができた。蛇足ながらもう一言。滝学園の同級生が、今回の番組をSNSで積極的にPR し、熱心に観てくれた。本当にありがとう。彼らの存在は励みになる。会えば、見た目はあの日のままの同級生。しかし、卒業後のそれぞれの人生のなかで、苦しみや悲しみ、口惜しさを経験し、だからこそみんな優しくなった。そんな彼らの心に響く番組を作り続けることで恩返しをしたい。 NHKの放送90年テーマソング、サザンオールスターズの『平和の鐘が鳴る』にこんな一節がある。
「ここにいるのは 私独りじゃない 過去と未来が 繋いだこの命」
滝学園から巣立ったひとりの卒業生として、過去と未来をつなぐ<いま>の仕事に生き甲斐を感じている。