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失敗と出会いの中で〜放送記者として〜
日本放送協会 記者 丹羽由香(平成24年・普通科卒)

活躍する卒業生 日本放送協会 記者 丹羽由香
 私は北陸の田舎まち、福井に住んでいます。県庁所在地とはいえ、車で少し郊外に出ると、田園地帯が広がります。自然豊かな、訪れたことすらなかった土地で、放送記者として生活をスタートさせて3年目を迎えました。
 田園地帯を通ると、滝で学んだ頃、のどかな江南のまちを思い出します。あの頃は、社会の役に立つ仕事をと漠然と考えていたもののジャーナリストを目指すことになるとは思ってもいませんでした。
 大学受験では、第1志望はかなわず早稲田に入学しました。初めての一人暮らしでホームシックになったとき、ジャーナリズムのゼミに入り、恩師となった2人の先生、志を同じくする仲間たちと出会い、とにかくいろんな場所に一緒に出かけ、さまざまな境遇の人たちと出会いました。
 けがや病気などで飼い主から捨てられた犬たちと、多摩川の河川敷で暮らすホームレスの佐藤さんは、空き缶拾いで犬たちの治療費やえさ代を得ていました。「ガマ・フヤー(洞窟を掘る人)」の具志堅さんは、沖縄戦でガマに逃げ込み、犠牲となった人などの遺骨を家族のもとに返すためボランティアで20 年以上収集を行い、ハンセン病療養所で回復後も暮らす人たちとも話をしました。ホームレスを自立させる活動を続けるNPO 代表に会いに大阪・あいりん地区も訪ねました。
 "弱者同士"で支え合う佐藤さんと犬たち。「なぜ、あなたたちは死ななければならなかったのか」と遺骨と"対話"し、生きること、戦争とはと、問い続ける具志堅さん。ハンセン病への差別・偏見は、ヘイトスピーチや福島原発事故の被災者への差別・偏見など、対象や形を変えて広がっています。あいりん地区では、体を壊し、働けなくなったホームレスの自死を考えました。彼らは空き缶拾いをし、街をきれいにしています。恐れるべきは「孤独」ではなく、彼らを社会から「孤立」させないこと。自分は社会に役立っている、つながっているという思いを断ち切らないことでした。
 受験がうまくいっていれば、こうした出会い、気づきはなかったと思います。私は"井の中の蛙"になっていたかもしれません。4年間の人との出会いで、ジャーナリズム活動を通じて社会をより良くできればと、ジャーナリストを目指そうと覚悟を決めました。
 日々向き合う事件事故、当事者への取材を通じて、無力な私に何ができるだろうか。自分の無力さにめげそうに、劣等感に押しつぶされそうにもなります。そんな時、頭に浮かぶのは出会ってきた人たちの姿。「とにかく現場に飛び込むこと」。「耐え、踏ん張れ」と背中を押してくれます。
 現代社会の抱えるさまざまな難題や課題は私たちの足元に転がっています。足元に目を凝らし、逃げず、問いかけ、発信していく。失敗の連続ですが踏ん張っていきたいと思います。

活躍する卒業生 日本放送協会 記者 丹羽由香