一般社団法人はーとプロジェクト代表理事 大森 秀樹(昭和59年普通科卒)
早いもので、私が滝学園を卒業してから36年が経ちました。毎年、同窓会報に目を通しながら卒業生の皆さんのご活躍を拝見しておりましたが、まさか自分が原稿を書くことになるとは、思いもよりませんでした。今回このような機会をいただき、感謝いたします。
さて、私は大学卒業後、17年間銀行に勤務し、2002年に家内と共に障がい福祉・高齢者福祉サービスの事業を立ち上げ、現在の一般社団法人はーとプロジェクトの活動に至ります。今年で18年、地元の福祉に携わってきたことになります。現在は江南市・岩倉市を拠点に、スタッフと共に日々の業務に奮闘しています。初対面の方に「福祉の仕事をしています」とお話しすると、必ず「高齢者の施設か何かですか?」と返されます。高齢者福祉のサービスについては、特別養護老人ホームや介護ヘルパーさんの活動など、皆さんも身近に感じていただけていると思います。
一方、障がい福祉のサービスについては、なかなか一般の皆様には理解と認知が浸透しません。障がい者の中には生まれつきの方もいれば、平穏な生活を送っていながら突然障がいを持ってしまう方もいるのです。そのような方々とコミュニケーションを取りながら、本人の意思に合わせた生活のお手伝いをしていくのが私たちの仕事です。
今回、私たちの事業の一つである「就労継続支援B 型 Feel」を紹介させていただきます。Feel で行なっている「農福連携」と呼ばれる取り組みでは、地域の耕作放棄地を無償でお借りし、耕作可能な畑に戻し、スタッフと障がい者が一緒になって野菜作りに励んでいます。無農薬・無肥料の自然栽培で作った野菜は、「食べチョク」という野菜の通販サイトや江南市役所などで販売しています。事業の目的としては、「障がい者一人ひとりが、社会の一員となって働き、収入を得て、自立すること」を掲げています。
この取り組みは、「地域の農業従事者の減少・耕作放棄地の拡大」と「障がい者が生活していくための仕事」の、それぞれの問題点を相互に補完することになります。また、障がいを持つ方々への地域の社会貢献となり、また逆に、障がいを持つ人も地域へ貢献するという相互恩恵を持っていると考えています。
いま社会では、障がい者雇用率の向上が求められています。個々の障がいの特性を知り、それを活かした仕事をすることで、会社に貢献し収入を得れば、納税者にもなり得るのです。著名人にもアップル社の故スティーブ・ジョブズ氏、スピルバーグ監督など障がいを持ちながら活躍されている方々も大勢います。日本でも環境があれば活躍できるのです。この環境が「インクルーシブな社会」なのだと考えています。
最後に、滝学園のさらなる発展と、卒業生の皆さまのご多幸を祈念いたします。
▼一般社団法人はーとプロジェクト オフィシャルサイト
http://heart-project.or.jp/
同窓会報「瀧」42号(2020年8月発行)掲載